バス釣りはかつて日本で一大ブームを巻き起こしたレジャーでした。1970年代から始まったブームは多くの若者を中心に広がり、メディアでも大きく取り上げられてきました。しかし近年、バス釣りの衰退を懸念する声が増えており、一部の釣具店ではバス用品の取り扱いを中止する動きも出てきています。

特に2005年の特定外来生物法制定以降、ブラックバスのリリース禁止エリアが拡大し、釣り場も減少傾向にあります。さらに釣り人のマナー低下による釣り禁止区域の増加や、SNSの影響によるフィネス釣法への偏りなど、様々な要因が重なってバス釣りを取り巻く環境は厳しさを増しています。
この記事のポイント!
- バス釣り衰退の歴史的経緯と主な原因について
- 釣具店におけるバス用品撤退の現状と業界への影響
- 釣り人のマナー問題と釣り場減少の関係性
- バスフィッシングの今後の展望と対策
バス釣り衰退の原因と現状を徹底解説
- 1970年代から始まったバスフィッシングブーム
- 1999年の琵琶湖外来魚駆除から始まった衰退
- 釣具店の在庫削減とバス用品撤退の実態
- 釣り人のマナー低下による釣り場減少の問題
- リリース禁止エリアの拡大による影響
- キャッチ&リリースの重要性と正しい方法
1970年代から始まったバスフィッシングブーム
バスフィッシングの歴史は1925年、赤星鉄馬氏による芦ノ湖へのブラックバス放流から始まりました。その後、1970年代に入ると第一次バスフィッシングブームが到来し、多くの若者を中心に人気を集めました。
この時期、アメリカで発展したブラックバスフィッシングが日本に紹介され、そのゲーム性の高さや多様なルアーを使用した釣りスタイルが注目を集めました。特にメディアがバスフィッシングを盛んに取り上げたことで、ブームは一気に拡大していきました。
1990年代に入ると、テレビや雑誌での露出が更に増加し、第二次ブームが訪れます。トーナメントシーンやプロアングラーの活躍が注目され、バス釣りは一種のライフスタイルとして確立されていきました。
当時は釣具店の店頭に数多くのバス用品が並び、新製品が次々と発売されるなど、業界全体が活況を呈していました。バスフィッシング人口は最盛期には700万人とも言われ、日本の釣り文化に大きな影響を与えていました。
テレビ番組や雑誌では、バスフィッシングを通じたファッションやライフスタイルの提案も行われ、若者を中心に幅広い層に支持されていました。
1999年の琵琶湖外来魚駆除から始まった衰退
バスフィッシング衰退の転換点となったのは、1999年に滋賀県が琵琶湖で外来魚駆除を開始したことでした。これを機に、ブラックバスに対する社会的な見方が大きく変化していきました。
2005年には特定外来生物法が制定され、ブラックバスは特定外来生物に指定されました。この法律により、ブラックバスの飼育や放流が禁止され、駆除活動が本格化していきました。これによって、バスの生息数が減少し、釣り場としての魅力も低下していきました。
特に琵琶湖では、リリース禁止措置が厳格に実施されるようになり、多くのアングラーが釣りを楽しみにくい状況となりました。この影響で、琵琶湖を訪れるバスフィッシング愛好者の数が減少し、地域経済にも影響を与えることとなりました。
藻刈りの影響も無視できません。琵琶湖では定期的な藻刈りが行われていますが、これがバスの生息環境に悪影響を与えているという指摘もあります。特に必要以上の藻刈りにより、魚の隠れ場所や産卵場所が減少し、バスの個体数減少に繋がっているとされています。
この時期以降、バスフィッシング人口は急速に減少し、現在では最盛期の10分の1程度まで落ち込んでいるとされています。
釣具店の在庫削減とバス用品撤退の実態
近年、釣具店におけるバス用品の取り扱いが大幅に縮小しています。上州屋やキャスティングといった大手釣具店では、バス用ルアーの在庫を半分以下に削減する動きが見られます。特に大型店舗では、バス用品の在庫が全体の3分の1程度にまで減少しているケースもあります。
この背景には、バスフィッシング人口の減少に伴う売上低下があります。かつては新製品が次々と発売され、活況を呈していた売り場も、現在では規模を縮小せざるを得ない状況となっています。
特に地方の小規模な釣具店では、バス用品の販売を完全に中止するケースも出てきています。これは在庫リスクを避けるための経営判断であり、業界全体の縮小傾向を如実に表しています。
メーカー側も生産調整を余儀なくされており、特に1ピースロッドなどの出荷制限が検討されています。これは在庫管理の効率化と市場規模の縮小に対応するための措置とされています。
シマノやダイワといった大手メーカーでさえも、バス関連製品のラインナップを見直す動きが出てきており、業界全体の構造変化が進んでいます。
釣り人のマナー低下による釣り場減少の問題
バスフィッシングの衰退には、釣り人のマナーの問題も大きく関係しています。野池での釣りでは、ゴミの放置や無断駐車、私有地への侵入といったマナー違反が増加し、その結果として釣り場が閉鎖されるケースが増えています。
特に野池は個人所有の場所が多く、これまで黙認されていた釣りも、マナーの悪化により禁止されるケースが増加しています。地域住民との軋轢が生じ、結果として釣り場が減少する悪循環が生まれています。
河川や湖沼でも同様の問題が発生しており、早朝からの騒音や迷惑駐車により、地域住民からの苦情が増加しています。メトロリバーでは河川敷の駐車場が限られているにも関わらず、不適切な駐車が問題となっています。
また、釣り具のポイ捨ても深刻な問題となっています。ラインやフックなどの釣り具が放置されることで、環境や生物に悪影響を与える可能性があります。これらの問題が、バスフィッシングのイメージ低下に繋がっています。
環境問題への意識が高まる中、こうしたマナー違反は社会的な批判を招き、結果としてバスフィッシング全体の衰退に拍車をかけることとなっています。
リリース禁止エリアの拡大による影響
リリース禁止エリアの拡大は、バスフィッシングの衰退に大きな影響を与えています。特に琵琶湖や八郎潟など、大規模な釣り場でリリース禁止が実施されたことで、トーナメントの開催地が大幅に制限されることとなりました。
大会の開催地が限られることで、50人規模の大会でも同じポイントに集中することとなり、過度な釣獲圧がかかる状況が生まれています。これにより、魚が賢くなり、釣りの難易度が上がる結果となっています。
特に霞ヶ浦などの限られたフィールドでは、プレッシャーの影響で通常のパターンが通用しにくくなっています。その結果、ライトリグによる繊細な釣りが主流となり、一般アングラーには敷居の高い釣りとなってしまっています。
このような状況は、新規参入者の減少にも繋がっており、バスフィッシング人口の減少に拍車をかける要因となっています。大会の魅力低下は、業界全体の活力低下にも影響を与えています。
今後も規制強化の流れは続くと予想され、バスフィッシングの普及に大きな障壁となっています。
キャッチ&リリースの重要性と正しい方法
キャッチ&リリースは、バスフィッシングの持続可能性を高める重要な取り組みです。しかし、その方法を間違えると逆効果となる可能性があります。特に魚の扱い方には細心の注意が必要です。
バスの皮膚はデリケートで、地面に置くなどの不適切な扱いにより火傷のような症状を引き起こす可能性があります。一見元気に泳いでいくように見えても、1週間程度で皮膚が化膿して死んでしまうケースがあります。
正しいリリース方法としては、ハンドランディングや最新のラバーネットの使用が推奨されています。できる限り地面に触れさせないよう心がけることが、バスの生存率を高めることに繋がります。
かつては釣ったバスの傷口に消毒をしてからリリースする釣り人もいたほど、バスを大切に扱う文化がありました。このような丁寧な取り扱いが、持続可能なバスフィッシングには不可欠です。
バスを長く生かすための適切なリリース方法を実践することは、次世代にも楽しんでもらうために重要な要素となっています。

バス釣り業界の衰退要因と将来性
- 外来種規制強化による影響
- SNSの普及による釣り方の偏り
- フィネス化による初心者離れの加速
- レジャーの多様化によるバス離れ
- 遊漁料制度導入による環境整備の可能性
- バスフィッシング復活への取り組み事例
- まとめ:バス釣り衰退を止めるために必要な対策
外来種規制強化による影響
2005年の特定外来生物法制定以降、ブラックバスへの規制は年々強化されています。この法律によって、ブラックバスの飼育や放流が禁止され、リリースが制限されるエリアも増加しています。
特に大規模な水域では、環境保護の観点から規制が厳格化されています。これにより、釣りを楽しめる場所が減少し、バスフィッシングの魅力が低下する要因となっています。
環境問題への意識が高まる中、外来種規制は今後も継続されると考えられます。これは単なる規制強化だけでなく、生態系の保護という観点からも重要な課題となっています。
一方で、岐阜県の五三川や大江川では、アングラーズパークという釣り人専用駐車場が設置されるなど、バス釣りを受け入れる動きも出てきています。また、室生ダムでもバス釣りが解禁になるなど、地域によって異なる対応が見られます。
有名な釣り場である芦ノ湖や河口湖、木崎湖、池原ダム、七色ダム、高山ダムなどでは、遊漁料や環境整備協力金を徴収する形でバス釣りを継続しています。
SNSの普及による釣り方の偏り
SNSの普及により、バスフィッシングの情報発信の形が大きく変化しています。かつてはテレビや雑誌が主要な情報源でしたが、現在ではYouTubeやSNSが中心となっています。
この変化により、釣果の見栄えや「いいね」を重視する傾向が強まっています。そのため、実際の釣りの楽しさよりも、見栄えの良い釣果を追求する風潮が生まれています。
特に釣果写真や動画の投稿では、成功例のみが共有される傾向があります。これにより、実際の釣りの難しさや失敗例が共有されにくく、初心者が現実とのギャップに悩むケースも増えています。
SNSでは大きなバスを釣った写真や動画が多くシェアされ、ビッグベイトやフィネスフィッシングに注目が集中しています。これにより、「この釣り方でないと釣れない」という固定観念が生まれ、釣りの自由度が失われつつあります。
情報過多の状況も問題となっており、使用するルアーやフィールドの選択に迷う釣り人が増えています。手軽に情報を得られる一方で、基本的な技術の習得がおろそかになる傾向も見られます。
フィネス化による初心者離れの加速
バスフィッシングの技術的な難易度は年々上昇しています。特に高度なテクニックや専用機材が必要とされる場面が増え、初心者やライトユーザーには敷居が高くなっています。
フィネスフィッシングの台頭により、繊細な釣りが主流となっています。これは魚が賢くなり、従来の釣り方では反応が得られにくくなったことが背景にあります。
複雑な技術と高価な専用機材の必要性は、新規参入者にとって大きな障壁となっています。かつての手軽に楽しめるレジャーというイメージから、専門的な趣味へと変化してきています。
特に初心者は、技術的なハードルの高さから挫折するケースが増えています。基本的な技術を習得する前に、高度な技術に挑戦せざるを得ない状況が、バス釣り離れを加速させている要因となっています。
釣具店でも、複雑化する釣り方に対応するため、商品説明や接客に時間がかかるようになっています。これは販売効率の低下にも繋がり、業界全体の課題となっています。
レジャーの多様化によるバス離れ
近年、キャンプやアウトドア、ソルトウォーターフィッシングなど、バス釣り以外のレジャーが若い世代に人気を集めています。これにより、バス釣りが相対的に選ばれにくくなっています。
特に若者のレジャーの選択肢が増加したことで、バス釣りの新規参入者が減少しています。デジタル化の進展により、スマートフォンやタブレットでのゲームやSNSなど、手軽に楽しめる娯楽が増えたことも影響しています。
都市部に住む人々にとって、釣り場へのアクセスの難しさも課題となっています。時間や労力をかける価値が見出しにくく、より身近な娯楽が選ばれる傾向にあります。
水質の悪化や生態系の変化も、釣り場としての魅力低下に繋がっています。魚が釣れにくくなることで、満足度が低下し、継続的な参加を妨げる要因となっています。
メディアの影響力の低下も要因の一つです。かつてテレビや雑誌を通じて広く紹介されていたバス釣りですが、現在ではその影響力が減少し、一体感のあるブームを形成することが難しくなっています。
遊漁料制度導入による環境整備の可能性
遊漁料制度の導入は、バスフィッシングの持続可能性を高める可能性を持っています。現在、芦ノ湖や河口湖などの有名釣り場では、すでに遊漁料や環境整備協力金を徴収する仕組みが導入されています。
この制度により、釣り場の環境整備や管理体制の強化が可能となります。徴収された費用を活用することで、駐車場の整備やゴミ処理、水質管理などの環境改善に取り組むことができます。
また、遊漁料の導入により、無秩序な釣りを抑制し、適切な管理下での釣りが可能となります。これは地域住民との関係改善にも繋がり、持続可能な釣り場の運営を実現する手段となっています。
水産庁も、漁業権が設定された魚種の混獲を理由に、バス釣り人からの遊漁料徴収を認めています。これにより、漁協との協力関係を構築し、新たな釣り場の開拓も期待できます。
地域経済の活性化にも貢献する可能性があり、釣り人と地域が共生できる仕組みづくりの一つとして注目されています。
バスフィッシング復活への取り組み事例
一部の地域では、バスフィッシングの復活に向けた取り組みが始まっています。岐阜県の五三川や大江川では、釣り人専用の駐車場「アングラーズパーク」が設置され、管理された環境での釣りが可能となっています。
室生ダムでのバス釣り解禁も、新たな取り組みの一例です。地域との協力関係を築きながら、秩序ある釣りの実現を目指しています。
環境に配慮した釣り方の普及も進んでいます。ハンドランディングやラバーネットの使用など、魚に優しい釣りの実践が広がっています。
釣り場でのゴミ拾いや環境美化活動も増加しています。これらの活動を通じて、地域住民との信頼関係を構築し、バスフィッシングのイメージ改善に繋げています。
釣り具メーカーも、初心者向けの製品開発や情報提供に力を入れ始めています。新規参入者の裾野を広げる取り組みが、少しずつ成果を上げています。

まとめ:バス釣り衰退を止めるために必要な対策
最後に記事のポイントをまとめます。
- 1970年代から始まったバスフィッシングブームは、1999年の琵琶湖外来魚駆除を機に衰退傾向へ
- 特定外来生物法の制定により、ブラックバスの取り扱いに大きな制限
- 釣具店でのバス用品取り扱い縮小が加速化
- マナー違反による釣り場閉鎖が深刻な問題に
- リリース禁止エリアの拡大がトーナメント開催に影響
- SNSの影響で釣り方が偏重化
- フィネス化による技術的難度の上昇が初心者離れを加速
- レジャーの多様化により若者の参入が減少
- 遊漁料制度の導入で環境整備の可能性
- アングラーズパークなど新しい取り組みも出現
- 適切なキャッチ&リリースの実践が持続可能性の鍵
- 地域との協力関係構築が今後の発展に不可欠